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納骨堂の費用は誰が払う?親族トラブルを防ぐ法的な正解とは 

納骨堂の費用は誰が払う?親族トラブルを防ぐ法的な正解とは 納骨堂

納骨堂の費用は誰が払うのが正解なのでしょうか。大切な家族との別れのあと、悲しみに暮れる間もなく現実的な問題として立ちはだかるのが、お墓や納骨堂に関するお金の話です。親が亡くなり、いざ納骨堂を契約しようとしたときに、兄弟や姉妹の間で「長男が払うべきだ」「いや、遺産から出すべきだ」と意見が割れてしまい、関係がギクシャクしてしまうケースは決して珍しくありません。また、相続税の申告を控えている方にとっては、お墓の購入費用が税金の控除対象になるのか、あるいは生前に購入しておいた方が節税になるのかといった、税務上のメリット・デメリットも非常に気になるところですよね。さらに、最近では「おひとりさま」の終活として、自分自身の納骨堂を生前に用意したいけれど、死後の手続きや管理費はどうすればいいのかというご相談も増えています。私自身も供養に関するご相談を数多く受ける中で、感情的なしこりを残さず、かつ経済的にも損をしない方法を知りたいという切実な声を毎日のように耳にします。

この記事でわかること
  • 納骨堂の費用負担に関する法的なルールと、よくある親族間トラブルの解決策
  • 兄弟姉妹で費用を折半する際に注意すべき、名義人の責任と権利関係
  • 相続税対策として知っておくべき「生前購入」と「死後購入」の決定的な違い
  • 管理費の滞納リスクや、独身者が安心して納骨堂を利用するための死後事務委任契約
供養プランナー高村宗一

業界歴20年以上、石材店・葬祭企業にてのべ1,500件以上の「墓じまい」「永代供養」の相談に対応。 専門用語が多く不透明な供養業界において、特定の業者に偏らない「中立的な立場」から、後悔しないための正しい情報を発信しています。

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納骨堂の費用は誰が払うべきか法的視点で解説

納骨堂の費用は誰が払うべきか法的視点で解説
  • 納骨堂の費用で兄弟が揉めないための話し合い
  • 納骨堂の費用を折半する際の名義人と注意点
  • 独身者の納骨堂費用と死後事務委任契約
  • 納骨堂の費用は相続税の控除対象になるか
  • お墓の生前購入が相続税対策に有効な理由

まずは、納骨堂の費用負担について、法律ではどのように定められているのか、そして世間一般ではどのような慣習があるのかを整理していきましょう。「法律」と「慣習」、そして「感情」のズレを理解することが、トラブルを未然に防ぐための第一歩です。ここを曖昧にしたまま話を進めると、後々大きな揉め事に発展しかねません。

納骨堂の費用で兄弟が揉めないための話し合い

納骨堂の費用で兄弟が揉めないための話し合い

納骨堂の費用を巡って兄弟間で揉める原因の多くは、「長男(跡取り)が払うのが当たり前」という昭和的な古い価値観と、「遺産を均等に分けるなら、お墓の費用も公平に分担すべき」という現代的な感覚が衝突することにあります。

まず大前提として、民法などの法律には「長男が納骨堂の費用を全額負担しなければならない」という直接的な規定は存在しません。

しかし、民法897条では「祭祀承継者(さいししょうけいしゃ)」について定められており、系譜、祭具及び墳墓(お墓や納骨堂など)の所有権は、慣習に従って祖先の祭祀を主宰すべき者が承継するとされています。つまり、お墓を守る人(祭祀承継者)が、お墓そのものを受け継ぐという原則があるのです。この条文が拡大解釈され、「お墓を受け継ぐ長男が、その購入費用や維持費もすべて負担すべきだ」という主張の根拠にされることが多々あります。

一方で、現代の相続では「法定相続分」に応じた遺産分割が一般的であり、兄弟姉妹が平等に財産を分けるケースが増えています。「財産は平等に欲しいけれど、お墓の負担は長男に任せたい」という次男・次女側の言い分と、「財産が平等なら、お墓の負担も平等にしてくれ」という長男側の言い分。どちらも一理あるため、話し合いが平行線をたどりやすいのです。

話し合いをスムーズに進めるためのポイント

感情論になりがちな話し合いを建設的に進めるためには、「誰が払うか」を決める前に、まずは「納骨堂の総額がいくらかかるのか」という事実を共有することが重要です。

  • 見積もりの透明化: 誰か一人が勝手に契約してから請求するのではなく、候補となる納骨堂のパンフレットや見積書を提示し、初期費用とランニングコストを可視化します。
  • 選択肢の提示: 「立派な納骨堂にしたいなら長男が出して」「安く済ませるならみんなで出そう」など、グレードと負担割合をセットで考えるのも一つの手です。

現実的な解決策として最も角が立たないのは、「納骨堂の初期費用は、遺産分割前の故人の財産から支払う」という方法です。これなら、実質的に相続人全員で負担したことになり、特定の誰かが損をすることはありません。ただし、その後の管理費(年間維持費)については、お参りに行く頻度が高い人や、祭祀承継者が負担するというルールを明確にしておくことが、長期的な平和につながります。

もし話し合いが決裂し、家庭裁判所の調停に持ち込まれるような事態になれば、時間も費用も精神的な負担も計り知れません。「親の供養」という本来の目的を見失わないよう、お互いの立場を尊重しながら、契約前に全員が納得できる着地点(妥協点)を見つける努力が必要です。

納骨堂の費用を折半する際の名義人と注意点

納骨堂の費用を折半する際の名義人と注意点

「これからの時代、兄弟みんなで助け合ってお墓を守っていこう」と、納骨堂の費用を折半すること自体は、非常に素晴らしい考え方だと思います。しかし、実務的な観点から言うと、安易な折半には落とし穴があります。それは、納骨堂の使用契約において、「名義人は原則として一人しか登録できない」という点です。

納骨堂の契約は、不動産の共有名義のように「兄が50%、弟が50%の権利を持つ」といった登記ができるわけではありません。あくまで宗教法人や管理者との「使用契約」であり、契約者は一名に限られるのが通例です。ここで生じるのが、「お金は兄弟全員で出したのに、法的な使用権(決定権)を持っているのは名義人一人だけ」というねじれ現象です。

折半によって起こりうるトラブル事例

  • 解約・改葬のトラブル: 名義人となった長男が、将来的に「引っ越すから納骨堂を解約して墓じまいしたい」と言い出した場合、お金を出した次男が反対しても、施設側は名義人の意向を優先せざるを得ません。
  • 承継時のトラブル: 名義人が亡くなった場合、その地位は名義人の配偶者や子供に引き継がれます。もし名義人の妻と、元の兄弟(義理の兄弟)との折り合いが悪ければ、兄弟はお参りしづらくなったり、最悪の場合「関係ない人は来ないでほしい」と言われたりするリスクもあります。
  • 管理費の押し付け合い: 「初期費用は折半したけど、毎年の管理費はどうする?」という取り決めが曖昧だと、結局は名義人に請求書が届き、名義人が一人で負担し続ける羽目になりがちです。

また、税務上の細かい話をすると、名義人ではない兄弟が高額な費用を負担した場合、それが「名義人への贈与」とみなされる可能性もゼロではありません。通常の納骨堂の価格帯(数十万〜100万円程度)で、兄弟数人で割る程度であれば、年間110万円の贈与税の基礎控除内におさまることがほとんどなので過度な心配は不要ですが、数百万円もする高級納骨堂の場合は注意が必要です。

それでも折半を選ぶのであれば、口約束だけで済ませるのではなく、簡単な「覚書(メモ)」を残しておくことを強くおすすめします。「初期費用は兄弟で均等に負担したこと」「将来的に墓じまいをする際は兄弟で協議すること」「管理費は誰が負担するか」などを書面に残し、全員が署名捺印しておくのです。とはいえ、一番トラブルが少ないのは、やはり「遺産(相続財産)から初期費用を一括で支払い、名義人は代表者が務める」という形でしょう。

独身者の納骨堂費用と死後事務委任契約

独身者の納骨堂費用と死後事務委任契約

近年、未婚率の上昇や核家族化に伴い、「おひとりさま」や「子供のいないご夫婦」からの納骨堂に関するご相談が急増しています。「自分が入るお墓の費用は、生きているうちに自分で払って安心したい。でも、自分が死んだ後、誰が納骨の手続きをしてくれるのだろう?」という、切実な不安を抱えている方が本当に多いのです。

独身の方が納骨堂を利用する場合、まずは「生前契約」が可能で、かつ「永代供養(えいたいくよう)」が付いているプランを選ぶのが鉄則です。永代供養付きであれば、最終的に承継者がいなくなっても、施設側が責任を持って供養を続けてくれるため、無縁仏になる心配がありません。費用的にも、後々の管理費を一括で前払いできるプラン(永代管理料込みのプラン)を選んでおけば、金銭的な迷惑を誰かにかけることもありません。

しかし、お金の問題が解決しても、「誰が実務を行うか」という問題が残ります。納骨堂を契約していても、あなたが亡くなったときに葬儀社を手配し、火葬を行い、遺骨を納骨堂まで運んでくれる人がいなければ、契約は絵に描いた餅になってしまいます。

そこで活用していただきたいのが、「死後事務委任契約(しごじむいにんけいやく)」です。

死後事務委任契約とは?

自分が元気なうちに、信頼できる第三者(司法書士、行政書士、弁護士、またはNPO法人など)と契約を結び、死後に発生する様々な手続きを代行してもらう制度です。

依頼できる主な内容通夜、葬儀、火葬の手配と執行 納骨堂への納骨手続き 役所への死亡届の提出 病院や施設の支払い、退去手続き ライフライン(電気・ガス・携帯)の解約 SNSやメールなどのデジタル遺品整理

この契約を結んでおけば、身寄りがなくても自分の希望通りの最期を迎えることができます。費用は依頼する内容や専門家によって異なりますが、一般的には数十万円〜100万円程度が相場です。公正証書で契約を作成し、預託金を預けておくことで、確実に執行される仕組みを作ることができます。

最近では、納骨堂の運営主体が、こうした死後事務のサポート業者と提携しているケースも増えています。「納骨堂+死後事務」をセットで準備しておくことが、独身時代を謳歌するための最強の安心材料になると私は思いますよ。

納骨堂の費用は相続税の控除対象になるか

納骨堂の費用は相続税の控除対象になるか

相続が発生した際、遺産総額から「借金」や「未払いの医療費」「葬儀費用」などを差し引くことができます。これを「債務控除」と言い、課税対象となる遺産額を減らすことで相続税を安くできる重要な仕組みです。では、納骨堂の購入費用は、この債務控除の対象になるのでしょうか?

結論から申し上げますと、死後に購入した納骨堂の費用は、相続税の計算上、遺産総額から差し引く(控除する)ことはできません。

「えっ、葬儀費用は引けるのに、お墓代は引けないの?」と驚かれる方も多いのですが、これは国税庁のルールではっきりと決まっています。理由は、お墓や仏壇、神棚などの「祭祀財産(さいしざいさん)」が、そもそも「相続税がかからない非課税財産」として扱われているからです。

税金の計算には「非課税のもの(お墓)を買うための費用を、他の課税財産(預金など)から引くことはできない」という考え方があります。もしこれが認められてしまうと、亡くなった直後に高額なお墓を買うことで、いくらでも相続税を減らせてしまうことになりますよね。

さらに注意が必要なのは、「生前に契約したが、支払いが終わっていない(ローンが残っている)場合」です。通常、亡くなった人の借金(ローン残債)は債務控除の対象になりますが、お墓や納骨堂に関する未払金に関しては、例外的に債務控除の対象外とされています(相続税法第13条)。

(参考)国税庁:No.4126 相続財産から控除できる債務
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/sozoku/4126.htm
※「非課税財産を取得、維持又は管理するために生じた債務」は控除できないと明記されています。

つまり、相続税対策を考えるなら、「死んでから買う」のも、「ローンで買う」のも、税制上はメリットがないということになります。「お墓代を遺産から引いて税金を安くしよう」という目論見は通用しないので、この点はしっかり覚えておいてください。

お墓の生前購入が相続税対策に有効な理由

お墓の生前購入が相続税対策に有効な理由

「じゃあ、お墓で相続税対策はできないの?」というと、決してそんなことはありません。むしろ、お墓は非常に有効な節税ツールになり得ます。その唯一にして最大の方法が、「生前に、現金一括で購入(支払い完了)しておくこと」です。

仕組みはとてもシンプルです。手元にある「現金」は相続税の課税対象ですが、それを生前に「納骨堂(祭祀財産)」という形に変えておけば、その納骨堂は「非課税財産」になります。つまり、購入した金額分だけ、課税対象となる遺産を減らすことができるのです。

具体的な節税シミュレーション

例えば、相続税率が10%かかる資産状況の方が、300万円の納骨堂を購入する場合で考えてみましょう。

  • パターンA:何もしないで亡くなり、遺族が遺産から300万円でお墓を買う場合
    残った現金300万円に対して相続税がかかります。税率10%なら、約30万円の税金が発生します。
  • パターンB:生前に自分の現金300万円でお墓を買っておく場合
    手元の現金が300万円減りますが、手に入れた300万円相当の納骨堂は「非課税」です。結果として、遺産総額が300万円減るため、かかるはずだった約30万円の相続税がゼロになります。

このように、生前購入は「現金を非課税財産に換える」という、国が認めた合法的な節税対策なのです。300万円のお買い物で、実質的に数十万円の節税効果が生まれるわけですから、やらない手はありません。

ただし、注意点が2つあります。

  1. ローンを組まないこと: 先ほど解説した通り、ローンの残債は債務控除できません。節税効果を最大化するには、現金一括払いで支払いを済ませておく必要があります。
  2. 常識的な範囲であること: 節税になるからといって、純金製の仏像や、あまりにも高額で骨董的価値があるようなお墓を購入した場合、「投資目的」や「租税回避」とみなされ、課税対象になる可能性があります。あくまで「供養のため」の常識的な範囲内(一般的には数百万円程度まで)で行うことが大切です。

「子供たちに少しでも多くの財産を残してあげたい」という親心があるなら、元気なうちに自分たちの気に入った納骨堂を見つけ、支払いを済ませておくこと。これが、家族にとっても自分にとっても、最も賢い「終活」の形だと言えるでしょう。

納骨堂の費用は誰が払う?トラブル回避の要点

納骨堂の費用は誰が払う?トラブル回避の要点
  • 納骨堂の管理費が払えないと起こる問題
  • 管理費を滞納した際の合祀や使用権取り消し
  • 初期費用と維持費で異なる支払い負担者
  • 遺産整理で納骨堂費用を精算する方法
  • 納骨堂の費用は誰が払うか家族で決める秘訣

ここからは、法律や税金の話から少し視点を変えて、実際に納骨堂を契約した「その後」に起こりうるトラブルとその回避策について、実務的な観点から深掘りしていきます。初期費用だけでなく、ランニングコストである「管理費」の問題は、意外と見落とされがちです。また、具体的な遺産整理の手順についても触れていきましょう。

納骨堂の管理費が払えないと起こる問題

納骨堂の管理費が払えないと起こる問題

多くの納骨堂では、購入時の「永代使用料」とは別に、施設の維持運営のために年間数千円から2万円程度の「管理費(護持会費)」が必要になります。契約時は「年間1万円くらいなら大丈夫だろう」と軽く考えがちなのですが、これが10年、20年と続くと、支払う側の経済状況や生活環境も変わってきます。

もし、何らかの事情で管理費が払えなくなってしまった場合、どうなるのでしょうか?

まず、支払期日を過ぎると、施設側からハガキや封書で督促状が届きます。うっかり忘れであればすぐに振り込めば問題ありませんが、これを無視し続けると、電話での催促や、より強い文面での督促が行われます。納骨堂の使用契約において、管理費の支払いは契約者の義務ですから、当然ながら法的措置の対象になり得ます。

特に注意したいのは、契約時に指定した「連帯保証人」や「緊急連絡先」になっている親族への影響です。契約者本人が支払いに応じない、あるいは連絡がつかない場合、施設側は連帯保証人に請求を行います。「叔父さんの納骨堂の保証人になっていたけど、まさか自分に請求が来るとは…」というトラブルは後を絶ちません。

放置のリスク

「もうお参りに行かないから払わなくていいや」と勝手に判断して放置するのは絶対にNGです。未払いの管理費は債務として残り続けますし、最悪の場合、親族間での信頼関係を完全に破壊することにもなりかねません。払えない事情ができた場合は、すぐに施設側に相談することが大切です。

管理費を滞納した際の合祀や使用権取り消し

管理費を滞納した際の合祀や使用権取り消し

督促を受けてもなお管理費を滞納し続けた場合、最終的にはどのような措置が取られるのでしょうか。これは各納骨堂の「管理規約」や「使用規則」に詳しく書かれていますが、一般的な流れを知っておくことは重要です。

多くの納骨堂では、「所定の期間(例えば3年〜5年程度)管理費の滞納が続き、かつ催告しても履行されない場合、使用権を取り消すことができる」といった条項が設けられています。つまり、強制退去です。

使用権が取り消されると、個別のスペースに安置されていた遺骨は取り出され、施設内にある「合祀墓(ごうしぼ)」や「永代供養墓」と呼ばれる共同の埋葬スペースに移されるのが一般的です。これを「改葬」と呼びますが、このプロセスには非常にシビアな現実があります。

それは、「一度合祀(ごうし)されると、遺骨は二度と取り戻せない」という点です。

合祀墓では、他の方の遺骨と一緒に混ざって埋葬されるため、後になって「生活が安定したから未納分を払って、もう一度個別の棚に戻したい」「遺骨を返してほしい」と申し出ても、物理的に特定・返還することが不可能なのです。大切な故人の遺骨が、自分の金銭的な事情で無縁仏のような扱いになってしまうのは、あまりにも悲しい結末ですよね。

もし将来的に管理費を払い続ける自信がない、あるいは承継者が途絶える可能性があるという場合は、見栄を張らずに、最初から管理費が不要な(初期費用に将来分の管理費が含まれている)「永代供養プラン」を選ぶか、早めに「墓じまい」をして合祀墓に移す決断をすることも、ある種の責任ある態度だと言えるでしょう。

初期費用と維持費で異なる支払い負担者

初期費用と維持費で異なる支払い負担者

冒頭でも少し触れましたが、納骨堂の費用負担で揉めないための非常に有効なテクニックとして、「初期費用」と「維持費」を完全に切り離して考えるという方法があります。これ、意外とできていないご家庭が多いんですが、費用の性質が全く違うので、負担すべき人も違って当たり前なんですよね。

まず、数百万円単位になることもある「初期費用(永代使用料や墓石代など)」について考えてみましょう。これは、故人が永遠に眠るための「終の棲家」を購入する費用です。ですから、その原資は「故人が残した財産(遺産)」から支払うのが、最も理にかなっています。もし遺産が十分にない場合は、子供たち全員で均等に割るか、経済力のある人が多めに出すなどして、一時的な出費として処理します。

一方で、毎年発生する「維持費(管理費)」はどうでしょうか。これは、お墓参りをするための環境整備費、いわば「お参りする人のための費用」とも言えます。また、いつまで払い続けるか期限が決まっていない、サブスクリプションのような性質を持っています。

ここでよくある失敗が、「管理費も親の遺産から払えばいいじゃないか」と安易に考えてしまうことです。遺産分割は一度きりの手続きですが、管理費の支払いは10年、20年と続きます。「遺産から50万円を取り分けて管理費専用口座を作ろう」なんてことも物理的には可能ですが、口座の名義変更や管理の手間を考えると、現実的ではありません。

おすすめの役割分担

  • 初期費用(イニシャルコスト):
    全員で話し合って決めるべき部分。基本は「遺産」から。足りなければ「相続人全員で折半」または「喪主」が負担。
  • 維持費(ランニングコスト):
    お墓の管理者(祭祀承継者)が負担すべき部分。近くに住んでいてよくお参りに行く人や、家を継いだ人が、毎年の経費として支払う。

このように役割を分担することで、「弟は初期費用も出さないのに、管理費も払わないのか!」といった兄側の不満や、「兄貴は遺産を多くもらったのに、管理費を請求してくる」といった弟側の不満を解消することができます。

また、最近では「管理費の一括前払い制度」を導入している納骨堂も増えています。「30年分で30万円」といった形で最初にまとめて払ってしまうプランです。これなら、初期費用の一部として遺産から捻出できるので、将来の負担をゼロにすることが可能です。「子供に管理費の負担を残したくない」と考えている方には、特におすすめの選択肢ですよ。

遺産整理で納骨堂費用を精算する方法

遺産整理で納骨堂費用を精算する方法

さて、実際に「遺産から納骨堂の費用を払う」と決まったとしても、実務上はどうすればいいのでしょうか。「親の銀行口座は凍結されていて引き出せないし、とりあえず誰かが立て替えるしかないの?」という疑問にぶつかりますよね。

具体的な精算の流れと、絶対にやってはいけない注意点を見ていきましょう。

1. 一時的な立て替えと領収書の保管

多くの場合、納骨堂の契約は葬儀の直後や四十九日までの慌ただしい時期に行われます。遺産分割協議が整う前ですので、とりあえず喪主や長男が自分の貯金から一時的に立て替えて支払うケースがほとんどです。

この時、何よりも重要なのが「領収書」です。宛名は「故人の名前」ではなく、「支払った人(立て替えた人)の名前」でも構いませんが、但し書きに「〇〇様(故人名)納骨堂永代使用料として」と明記してもらうと、後で説明しやすくなります。見積書や契約書の控えも必ずセットで保管してください。

2. 遺産分割協議での精算

四十九日が過ぎ、落ち着いた頃に行う「遺産分割協議」の場で、立て替えた費用を精算します。具体的には、遺産の総額から、葬儀費用や納骨堂の購入費用を差し引き、残った財産を相続人で分けるという計算を行います。

口頭での精算はNG!

「あのお金、立て替えておいたから引いとくね」と口頭で済ませるのはトラブルの元です。必ず「立替金精算書」のような簡単なメモを作り、領収書のコピーを添付して、他の相続人に見せながら説明しましょう。

3. 預貯金の仮払い制度の活用

もし、手持ちの現金がなくて立て替えられない場合は、2019年の民法改正で創設された「預貯金の仮払い制度」を利用することができます。これは、遺産分割協議が終わる前でも、一定額までなら故人の預金口座からお金を引き出せる制度です。葬儀費用や当面の生活費、そして納骨堂の購入費用などに充てることができます。

ただし、引き出せる金額には上限があります(金融機関ごとに150万円まで、かつ法定相続分の3分の1まで)。急ぎでお金が必要な場合は、銀行の窓口で相談してみると良いでしょう。

(出典:一般社団法人 全国銀行協会『民法(相続法)改正 遺産分割前の預貯金の払戻し制度』

4. 遺産分割協議書への明記

最後に、決定事項を「遺産分割協議書」に記載します。「誰が祭祀承継者として納骨堂を継承するか」と合わせて、「納骨堂の購入費用〇〇円は、被相続人の遺産から支弁した」という旨を明記しておけば、後から「あの金は使い込みじゃないか?」と蒸し返されるリスクを完全に防ぐことができます。

納骨堂の費用は誰が払うか家族で決める秘訣

納骨堂の費用は誰が払うか家族で決める秘訣

ここまで、法律、税金、慣習、そして実務的な手続きまで、様々な角度から「納骨堂の費用」について解説してきました。情報量が多くて少し頭が痛くなってしまったかもしれませんが、最後に一番大切なことをお伝えして締めくくりたいと思います。

結局のところ、「納骨堂の費用は誰が払うべきか」という問いに、万人に共通するたった一つの正解はありません。

それぞれの家庭には、それぞれの経済状況があり、家族の歴史があり、故人への想いがあります。「長男が払うのが伝統だ」と考える家もあれば、「親子でもお財布は別」と割り切る家もあります。どの考え方も間違いではないのです。

ただ、私がこれまでの相談業務を通じて痛感しているのは、「曖昧にしたまま見切り発車すること」が最大の悲劇を生むということです。

  • 「たぶん兄貴が払ってくれるだろう」
  • 「遺産があるからなんとかなるだろう」
  • 「後で話せばわかってくれるだろう」

こうした「だろう運転」ならぬ「だろう契約」は、大切な家族の絆に修復不可能なヒビを入れてしまいます。お金の話は、身内だからこそ一番シビアに、そしてクリアにしなければなりません。

家族で決めるための秘訣は、「契約のハンコを押す前に、全員で腹を割って話す場を設けること」、これに尽きます。もし当事者同士だと感情的になって喧嘩になりそうなら、納骨堂の担当者やお付き合いのあるお寺の住職など、第三者に同席してもらうのも一つの手です。専門家が入ることで、客観的な相場や一般的な事例をベースに、冷静な話し合いができるようになります。

納骨堂は、亡くなった大切な人が安らかに眠り、残された家族が手を合わせて絆を確認するための、とても神聖で温かい場所です。そんな場所が、お金の揉め事の象徴になってしまっては、故人も浮かばれませんよね。

この記事を読んでくださったあなたが、法的なルールや節税の知識を武器にしつつも、最後は「家族みんなが納得して、気持ちよくお参りできる形」を見つけられることを、心から願っています。まずは勇気を出して、「ちょっとお墓のお金のこと、相談したいんだけど」と兄弟に声をかけるところから始めてみてくださいね。


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